14. サランダ ~ギリシャ神話みたいな森と、旅のすれ違い~
翌日、寝たときとまったく同じポジションで目が覚めた。
目を開けた瞬間、頭痛はなく、触ると少し痛いくらいで、ちゃんと喋れるし音楽も普通に聞こえる。冷静な友達とも話してみて問題なさそう、めまいもしない。大丈夫!本当にラッキー!!!
今日は楽しみにしていたButrint National Parkへ。
Butrint National Park(ブトリント国立公園)は、古代ギリシャやローマ時代の遺跡が残る、アルバニア南部の自然と歴史が融合したユネスコ世界遺産。Sarandëからバスで40分〜1時間ほど、ローカルバスで行けるらしい。30分に1本と聞いていた。
奇跡的に二日酔いまではいかないけど体がしんどかったので、まずはコーヒーと朝ごはんを探すことに。そのついでにバスの時間も確認しよう。こじんまりしたカフェGold Coffee ShopでFreddo Cappuccinoをオーダー。ギリシャで初めてFreddo Cappuccino(ギリシャ発祥の飲み物らしい)を飲んだときは感動した。普通のアイスカプチーノとは違って、とにかくこっちの方が好き🩷 ご夫婦で営んでいるらしく、温かさと美味しいFreddo Cappuccinoが体に染みわたる。コーヒーと一緒にビスケットと小さな巻物が添えられていて、その巻物にはとても素敵な言葉が書かれていた。アルバニアのコーヒー文化って、イタリアとギリシャの中間みたいで好き。
朝ごはんには大きなByrekを買ったので、半分はおやつに持っていくことに。Byrekは薄いパイ生地にチーズや肉、野菜を包んで焼いたアルバニアの伝統的な惣菜パイで、街中でよく見かける。
バス停ではもちろん時間通りにバスは来ないので、気長に待った。Butrint行きのバスは途中で人気のビーチタウンKasmilも通るため、人はそこそこ乗っていた。料金は2ユーロくらい、40分ほどで到着。
驚くほど人がいない。オフシーズンとはいえ、ユネスコ世界遺産でここまで人がいないなんて。緑が豊かで、木漏れ日がずっとついてきてくれるよう。まるでギリシャ神話の世界にテレポートしたみたいで、トガを着て歩き回りたくなった(笑)。
約2500年以上にわたり、ギリシャ、ローマ、ビザンツ、ヴェネツィア、オスマン…複数の時代の建造物が重なった珍しい遺跡。その中を歩き、石に触れられるなんて贅沢なひととき。勝手に”ここはパワースポットだ”と感じたりして。木々も優しく見守ってくれているようで、最高のお散歩だった。Blue Eyeに続き、自然にたっぷり癒された。
帰り道、Kasmilの真ん中あたりでバスを降りてビーチへ。まだ寒かったけど、日光浴している人もちらほらいて、子どもたちは冷たい真っ青なイオニア海で元気に泳いでいた。私は砂の上に座り、本を読み始めた。
すると昨日の夜に知り合ったキャサリンから連絡が。本当に来た!”Kasmilのビーチにいる”と伝えると、彼女は車で向かってくると。そして本当に来た。フットワークの軽さに感心。大体バーとかで知り合った人たちは”また会おうね”で終わり、一期一会で私は満足するタイプ。でもやっぱり嬉しかった。一緒に車でSarandëへ戻り、ご飯を食べに行くことに。
彼女の真っ赤なマニュアル車は、運転が少し荒いけどかっこいい。途中”スイカを買いたい”と言ってフルーツ屋さんで止まった。1kg単位で売られていて、相場より高め(正確な値段は覚えていないけど、アルバニアにしてはかなり高かった)。キャサリンは値札を見ずにおばあちゃんに渡したら、なんと15ユーロくらいに。さすがに高すぎて”それならいらないわ!”と笑顔で皮肉っぽく返し、ちょっと怒っていた。車に戻ると”アメリカ人だから高くされた”と言う。でも私は”いや、値札自体が高かったよ。詐欺じゃないと思う”と言ったが、彼女は聞き入れず、友人たちにメッセージを送り始めた。正直、スイカが高かったからという内容で”詐欺”と騒ぐのに少し不快を覚えた。しかも買ってないんだから。。。
安い国では多少の”ぼったくり”はあるものだし、ケースバイケースではあるけど、数百円〜数千円で誰かの生活の助けになるかもしれないなら私は気にならない。今回はそもそも詐欺ですらなかった。観光客への値段設定はよくある話。そこまで怒る必要あるのかなと思った。やっぱり捉え方で体験は大きく変わるんだなーとしみじみ思った。
さらに彼女は”ガソリンを入れたい”と言い、スタンドに寄ったがカードは使えないと断られる。”前はカードを受け取ってくれたのに”と彼女は不満そう。でも私は”アルバニアはほとんど現金だよ”と伝えた。彼女は”いや、現金がないと言えば、たいていカードを受けてくれるし、ダメでも翌日払いに行けばいい”と。私はどうも納得できなかった。小さな金額のカード決済だと店側に手数料負担が出るし、現金主義には理由がある(過去に政府によるネズミ講で一般の人達のお金を使って破綻させたから銀行に信用がない)。それを理解してリスペクトすべきだと思う。むしろ”翌日でもいいよ”と信じてくれるアルバニア人の優しさに感動したし、現金を持っておくべきだなと思った。
確かに不便だけど、現金でのやりとりには独特の気持ちよさがある。カードより距離が近い気がするし、いい気持ちだとチップも渡したくなる。お互い気持ちよく終われるのは新鮮だった。
正直、この時点でキャサリンには少し疲れ気味だったけど、彼女の思いつきの行動力は好きだった。”ここ眺め良さそうだから寄ってみよう”と、Orange Club Sarandeに立ち寄った。ギラギラのクラブっぽいけど、オフシーズンだから閉まっているかと思いきや開いていて、海沿いの席に座るとめちゃくちゃ気持ちいい。数家族がいて、子どもたちも遊んでいた。Sarandeを一望しながらビール。とても穏やかな気持ちになれた。
その後、またHaxhiへ。やっぱりここは美味しい!
ただ、改めて友達と食べるご飯は心から幸せ。でも、よく知らない人だと疲れると実感。やっぱり私は一人でいる方が、純粋に楽しみや幸せを感じられるんだろう。
明日からはコルフ島へ行く予定。帰りにSarandeで一泊してからTiranaに戻る。その時は”泊まっていいよ”とキャサリンが言ってくれて、ホスピタリティは素敵だなと思ったけど、自由に動きたかったし、バス停近くに泊まりたかったから今回は遠慮した。
今夜は昨日のこともあるし、ホテルに戻ってゆっくり過ごすことにした。