13. サランダ ~アルバニアの青に酔い、ワインにも酔い…そして床にも~
この日はSarandëから30分ほどの森の中にあるBlue Eyeへ行くことにした。
Blue Eyeは、森にひっそりと湧き出る天然の泉で、地下から湧き上がる冷たい水が驚くほど澄んだ青色をつくり出す楽園のような場所。
タクシーだと割高だからバスを調べていたけど、通常はGjirokastërからのバスにヒッチハイク的に乗り、そこからBlue Eyeのゲートまで20分ほど歩く必要があるらしい。しかも時間が決まっていない…。そこで見つけたのがKMG ShuttleというBlue Eye専用のバス。往復15ユーロ(2025年4月時点)で、WhatsApp経由で連絡が来て予約も簡単。時間も決まっていてゲートまで直接行ってくれるから、待ちぼうけもなし。これは助かった。
快晴。ゲートからは電動バスや電動バイクレンタルもあるけど、私は歩くことに。整備された道路にそって歩いてると、ちょこちょこ森の隙間からとんでもない青色の川が見える。普通に流れているのが奇跡みたい。
Blue Eyeに近づくにつれて景色はさらに圧巻。言葉では表現できないほど多様な青色が広がり、すべてがフィルターをかけたみたいで何度も目を疑った。泉の湧き出し口は透き通っているのに底が見えない。深さ50メートル以上あるらしく、ダイバーも50メートルまで潜ったけれど湧き水の勢いが強すぎてそれ以上は測れない、まさに未知の世界だった。
観光客は多い方だった(それでも日本の観光地に比べたら超少ない)が、横にハイキングコースを発見。1時間と書いてあったので、帰りのバスに間に合うし行ってみることに。歩き出すと、まるで”秘密の花園”ならぬ”秘密の青園”に迷い込んだ気分。急な坂もあるけれど基本歩きやすく、とにかく見たことない景色の連続。妖精が出てきそうなくらい神秘的で、このハイキングコースは本当におすすめ。飛び込みたくなるほど美しい水だったけど、めちゃくちゃ冷たいうえに4月はまだ肌寒いから断念。次こそ泳ぐぞ!
気持ちいいハイキングを終え、”これぞ生きた絵画”と思いながら、地球に感謝してSarandëに戻った。
夕方は海沿いのバーで夕日を眺めながらカクテルを飲み、そのまま夜ごはんへ行くプラン。ホテルで持ってきたワンピースに着替え、ちょっと化粧をして気分を上げる。歩いて数分のJericho Cocktail Barへ。カウンター席は海に面していて最高。爽やかなカクテルを飲みながら日記を書いていると、一席空けて隣に座っていた女性と目が合い、にこっと微笑んで”Hi”と声をかけたら、そこから一気に盛り上がった。
彼女はアメリカ出身のキャサリン。仕事を引退し、家や家具を全部売ってノマド生活をしているという。ギリシャのコルフ島からフェリーで30分ほどでアルバニアに行けると聞き、気まぐれで来てみたら、物価の安さとのんびり感が気に入って半年滞在することにしたそう。アメリカ人は観光ビザで1年間滞在できるらしい。
キャサリンはとにかくパワフル。友人たちはそれぞれ安定した老後を過ごしているけれど、彼女は”つまらないからやりたいことをやる!”と決めて行動している。初ヨーロッパは数年前だったらしいけど、50代で勇気を出して旅に出るって本当にかっこいい。不安もあっただろうに、それでも飛び込む姿勢に心から尊敬。
最初は一杯だけで帰るつもりが、彼女が”おかわり!”と言ったので一緒にスパークリングワインを。彼女はジム帰りにふらっと寄ったらしく、スポーティな格好で飲んでるのもかっこよかった。しかもお酒が強い!どんどんおかわりする。気づけば18時から飲み始めて、もう21時。連絡先を交換し、翌日も会うことに。
私は酔いながらも”やっぱり何か食べたい”と思い、予定していたレストランHaxhiへ。バーから歩いて数分、2階にあるお店は外観からカラフルで、店内は活気にあふれていた。イカのフリット(Fried Calamari)を注文。酔っ払いの空きっ腹には完璧すぎる選択。ついでにワインも。なみなみと注がれたグラスに気分はさらに上がる。ウエイターに”Ada(ジロカストラでの宿主)に教えてもらった”と伝えたら友達らしく、ちょっとローカル気分で嬉しくなった。フリットがとにかく絶品!タレも美味しいけど、そのままでも最高。ボリュームもたっぷりで”極楽浄土”とはまさにこのこと。幸せいっぱいでホテルに戻った。
しかし、ここで事件発生。酔っ払いながらシャワーを浴び、スリッパで動いた瞬間――床がツルッ!と滑り、バランスを崩してドアの角に頭を強打。アルバニアで4箇所目の滞在先だったが、大体シャワーがカーテンでトイレと仕切られているだけなので、床が全体的に濡れてめちゃくちゃ滑りやすい。これまで何度も”危ない!”と思いながらも華麗にリカバリーしてきた自分を褒めてた。…のに、この日はシャワー後にスリッパを履いて動いたら逆にさらに滑ってしまい、リカバリーできたと思った次の瞬間、頭を角にぶつけて、そのまま倒れてしまった。
意識はあったけれど、頭が激痛。血も出ていないし、言葉もちゃんと話せたので”朝の様子を見て病院に行けばいい”と自分に言い聞かせて落ち着かせる。とはいえ、もしここで人生終わっても”マジで楽しい人生だったな”と思える自分に感謝(笑)。そのまま右を向いて寝て、無事に朝を迎えた。
皆さま、酔いすぎと空きっ腹での飲酒、本当にご注意ください。