8. ジロカストラ~石の町へ、苦笑いまじりの揺れの3時間~

Gjirokastër(ジロカストラ)は、石造りの家々が山の斜面に広がる「石の町」として知られ、オスマン時代の伝統的な建築が今も残る、ユネスコ世界遺産の歴史都市。

朝8時にBeratの長距離バス停から出発予定だったので、7時半ごろに市内のバス停から、そこへ向かうバスに乗ろうと思っていた。もし最悪バスが来なかったとしても、タクシーなら7分程度。タクシーも安いけれど、50円以下で行けるというバスの魅力にはやっぱり勝てない。その時間帯に決まった時刻表はなく、15分おきに来るよと聞いていた。

ただ、市内のバス停には”ここが停留所”という明確な表示はなかった。そんなとき、タクシーの運転手らしきおじちゃんが「タクシー?」と声をかけてきたので、「バス」とひと言返すと、すぐに通じ合った。おじちゃんはタクシーを無理やり勧めず、「こっちこっち」とバス停らしき場所へ案内してくれて、さらにはバスが来たら呼びに来てくれた。やさしい。

Beratの長距離バス停では、目的地の”Gjirokastër”と書かれたミニバスを見つけて乗り込んだ。運転していたのは20代くらいのお兄ちゃんで、せっかちな雰囲気に、低くてガラガラした特徴的な声。遠くからでも「あ、あの人だ」とわかるタイプ。

バスの中は空席が目立ったけど、定刻で出発。所要時間は約3時間。途中、トイレ休憩もあり、どこのトイレも意外ときれいだった。中には、バスの運転手に直接「トイレ行っていい?」と聞いてる人もいた。自由。

最初はガラガラだった車内も、途中からヒッチハイカーのように道端で人を拾っていって、最終的には満席に。

そんな中、街中をゆっくり走っていると、後ろから来た車と接触して…事故発生!
幸い、けが人はいなかった。

運転手のお兄ちゃんは急停車して、何かを叫びながらプンプン怒って外へ飛び出していった。当然、野次馬気質の私はすぐに外へ。相手の車は左のフロントライトが大きく壊れていて、お兄ちゃんだけが怒鳴ってる。他の人たちは、誰が相手の運転手かもわからないくらい冷静で、普通にタバコ吸ってた。さすが、慣れてる!?

”これ、警察とか来て時間かかるやつかな〜”と思っていたら、お兄ちゃんは相手の車の写真を撮って、私たちに”戻れ”と手で合図。そして、何事もなかったかのように再び運転を始めた。でもイライラした様子で誰かと電話してた。

すると、バスの一番後ろに座ってた人が「トランクのドアが開いてるよ」と声をかけ、隣の人が後ろに手を伸ばしてバタンと閉める。
すると、突然お兄ちゃんがマンガみたいな勢いでUターン!来た道を戻り始めた。

何事!?と思って隣の若いアルバニア人に英語で聞くと、「荷物が落ちてないか確認してるんだよ」とのこと。なるほど、よくあることなんだ…。でもその確認方法とUターンの勢いが妙にツボで、一人で笑いが止まらなかった。

しばらくして、街でもなんでもない草原の真ん中でバスが停まった。そして突然「Gjirokastërだよ」と言われて、降りろとジェスチャー。
Google Mapで確認しても、まだ街じゃない。
一応Mapを見せると”わかってるよ”って感じで促され、今度はタクシーでもなんでもない、今にも壊れそうな古いワゴン車に乗り換え。2台に分かれて乗り込み、ぎゅうぎゅう詰め。おじいちゃんがスーツケースと一緒に席のない後部スペースに座っていたのが印象的だった。

今回の宿は中心街から少し離れていたので、事前にどうやって行けばいいか聞いていた。すると着いたら迎えに行くよとのことだったので、連絡。
しばらくしても来なかったけど、電話がかかってきて「バス停にいるけど見つからないの」と。え、ここバス停じゃないんかい…!と、心の中で降ろした運転手にツッコミを入れた。

その後、WhatsAppで現在地を送って、迎えに来てくれた。やさしそうな女性、Ada。バス停と思ってた場所から歩いて5分のところが本当のバス停で、確かにそこにはバスがたくさんいた。

そこから車で10分ほど走ると、ぽつんと建物が現れた。今回泊まる宿、The Barrels Ms

建物はモダンでおしゃれな雰囲気だったけれど、絶賛工事中だった。

でも、ガーデンから見える山の景色はまさに絶景。
このレストランはワインでも有名らしく、事前に「ここでのディナーがとても評判がいい」と読んでいたので、私の目的はただひとつ。
ここでひたすら食べて、ワインを飲んで、絶景を見ながらだらだら幸せになること。

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