10. ジロカストラ~ 山道と食卓、ジャパニーズ根性~
快晴の冷たい空気、太陽の優しい眼差しの中、目の前で山と鶏が自由に走り回っているのを眺めながらの朝ごはん。
またAdaが中心街まで送ってくれることに。
でもAdaが少し疲れていたので、コーヒーを一緒に飲むことにした。Adaはとても居心地のいい人で、自然体でいられる。宿の人とこんなふうに壁なく接してもらえるのはとても新鮮。
Adaはアルバニアの最南端、ギリシャとの国境近くにあるKonispolという町で育った。ご両親は羊飼い。独裁時代のことを聞いてみたら、Adaのご両親は一切話さないという。その地域では、多くのアルバニア人がギリシャへ亡命しようとして命を落としたらしい。
彼女は大人になってから海辺の町Sarandë(私も次に行こうと思っている場所、ここから1時間くらい)でずっとレストランで働いていて、そこで旦那さんと出会ったそう。旦那さんからのアタックに最初は”絶対に付き合わない”と言ったのに、3回目のデートでフォーリンラブ🧡。旦那さんの両親と一緒に仕事をするのは大変だけど、旦那さんがすごく優しいから”私は幸せ者”と笑っていた。素敵。
もっと話を聞きたかったけれど、忙しいAdaは帰って行った。
昨日はGjirokastër城に行ったから、今日は少し離れたAli Pasha Bridgeへ。山の中にある18世紀の水道橋跡で、Ali Pashaが築いた水供給システムの一部だったらしい。徒歩30分くらいだからちょうどいい散歩、と思った。
・・・が、やっぱり散歩というより急坂のハイキング。涼しいのに汗だくで、息も荒い。軽く崖っぷちを歩くドキドキ感の末に到着。谷間にある橋は自然の一部のように見え、羊飼いが羊を連れて歩く風景はまるでアルプスの少女ハイジ。
近づくほどに”よくこんなものを作ったな”と人間の偉大さに感心した。
その後は古い邸宅を改装した博物館、、Skenduli HouseやZekate Houseへ。1800年代の人々の暮らしをのぞくのは面白い。Skenduli Houseでは英語のガイドがいて当時の生活を詳しく聞けて楽しかった。Zekate Houseは景色が最高で、コーヒーを飲みながら一息つけた。どこへ行くにも急坂の上り下りばかりでテンションも同じく左右される。笑
夜ご飯は昨日と同じS&P Restaurantへ。昨日メニューの写真を撮っておいたので、試してみたいリストがあった。
入店すると、ママが満面の笑みで迎えてくれた。私もほっこり。旦那さんは特に笑顔ではないけど、温かい雰囲気がある。
ワインを頼んで、ママにメニューを指さしながらハートマークを作ると、そしたら頭に電球ができたみたいに理解してくれた。そしてすすめてくれたのがTavë Kosi。アルバニアの国民料理で、ヨーグルトと卵を混ぜたソースをラム肉とご飯にかけて焼いたもの。ラム肉の匂いが強いかどうかがポイント。基本的にラムは好きだけど、クセが強すぎると苦手。でもママのおすすめだし、挑戦してみたいと思った。好き嫌いが分かれそうな料理は、自分の好きなお店で食べるのが一番。ワインもあるし、きっと大丈夫!と期待。
ママがニコニコしながら持ってきた料理は美味しそう。でも食べてみると・・・ラムのクセがかなり強い!おっと、、、ワインが進む。ママの嬉しそうな眼差しに、私も笑顔で”美味しい”と答えた。ここはジャパニーズ根性発揮(笑)。
その後、野菜のグリルとQofte(ひき肉のミートボール)を追加。どちらも最高に美味しい。苦手なものと好きなものを交互に食べながら、無事完食。お腹パンパンだったけど、完食したジャパニーズ根性に誇りに思った笑。
帰りもやっぱり徒歩1時間。消化にいいし、景色も最高。
ただ、車がすぐ横を猛スピードで通る。私が一人で歩いているのが珍しいのか、時々車が止まって若いお兄ちゃんたちが”どこから来た?”と聞いてくる。”ヤポニ(日本)”と答えると”ふーん”とだけ言って去っていく。興味はあるけどピンと来ない国、って感じなのかなと思った。
夕暮れ前に宿に戻ると、Adaが走ってきた。”また歩いたの!?”と。私が”ワインちょうだい”と言うと、”ボトル?それともグラス?”。グラスにしておいた(笑)。
外は寒いけど、歩いてまだ体が熱っていたからちょうどよかった。ふと見ると、鶏が木に飛び乗って止まっていた。鶏が木の上にいるのを初めて見て、必死に写真を撮っていたら、Adaは不思議そうに見ていた。旅の醍醐味はここでも私の中で普通をくつがえししてくれる。